山吹と濡羽の狂詩曲〜エンカウント〜

店を出て、急ぎ足になるかと思っていたが 驚く程にゆっくりとしていた、リヤカーを引き 後ろからゴマがそれを押す形である。

「で、そのギターってのはなんなんだ?」

「ギターってのは楽器だよ、分かりやすく言えば 板に糸を張ってそれで音を出すんだ」

「やっぱり良く分からないが、向こうに着いたら見せてくれるんだろ?」

ゴマはにっこり笑って頷いたが、何故かパーカーのフードを被り顔を伏せた


「…そいえばさ?お兄さんてグリングラスから来たってたよね?」

不意にというか、脈絡無くゴマがそう聞いて来た、自分としてはあまり答えたくない話題ではあったが 邪険にするのも違う気がした

「そうだが何か気になるか?」

そう言うと、先程のハイテンションからは考えられない程の渋い顔で首を傾げ動きを止めた

「…どうした?」

立ち尽くしたまま顎に指を当て、何かを考えている風に見える、ぶつぶつと何かを呟き フードを捲ると爪先で地面を軽く小突いて勢い良く走り出した

「ごめん!ちょっと急ぎになったから先行くよ!お兄さんは荷物あるからゆっくりおいで!」

突然の事にアークは驚いたが、返事を待たずゴマは走り去ってしまった

「いや、なんなんだよ一体!?」

走り去るゴマの後ろ姿を見てリヤカーに振り返り、大きな溜め息を一つ吐いた。

「あぁ…やれやれだぜ・・・」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

体格の良い子ね・・・


最初に目に入ったのは、無表情で黙々とじゃがいもを頬張る少年だった、傍らには太鼓やシンバルが並べられ どうにも違和感というかミスマッチとしか言い様がない。

「いやぁ昨日まで一部屋空いてたんだが、今朝塞がってしまってね 駐車場を使うのは構わないんだが…まぁ一応設備もあるし、困る事はないだろうが、女性の野宿は危険だろう?」

「いえ、弟も一緒ですから 大丈夫ですよ」

「しかし分かってると思うが ここはカジノだ、中には柄の悪い者も居る、いや勘違いしないでくれよ?君達に場所を貸したくない訳ではではないんだ、だが最近来る客に少し素行の悪いのが居…」


「おぉい!おぉい!!クソも遊べねぇじゃねぇかよ!この店はよぉ!!3万もイカれちまったぜ!」

「俺は5万だ!どうなってんだよこのカジノはよぉ!!」

そこまで言ってオーナーの声はカジノから出て来た 『あからさまに柄の悪い』2人組の罵声に掻き消された

モヒカンヘッドにスタッズだらけの革のジャケット、1人は右肩に、もう1人は左肩に髑髏のタトゥーが入っていた

右髑髏は丁度真正面に居たオーナーの前に来ると 肩を小突き悪態を吐いた

「おぉい!お前!ここのオーナーだろぉ!なんかイカサマとかしてんじゃねぇのか!?よからぬ噂が立つ前に俺達に金返せよ!!」

「そんな無茶苦茶な話は聞けん!それに暴力はヤメたまえ!」

言い返されたのが気に食わなかったのか、右髑髏はますますいきり立ち オーナーの襟首を捻りながら持ち上げると、壁に叩き付けて額を擦り付ける様に怒声を挙げた

「おぉい!大人しく言う事聞いといた方がいいぜぇ!!よからぬ噂が立つ前に大怪我までしたくねぇだろぉ!?」


最初から見過ごすつもりはなかったが、流石にやり過ぎだろうと思った時には右髑髏の肩を叩いていた

「ねえあなた?いくらなんでもやり過ぎじゃないかしら?そこで止めておけば あなた達も痛い目に遭わなくて済むと思うのだけど?」

これに驚いたのは右髑髏の方だった、振り返るなり標的をチャミに切り換える、ニヤニヤと下卑た顔付きで頭から足元までを舐める様に見た後 オーナーを放り投げると左手を掴み無理矢理に引き寄せた。

幼い頃から傭兵部隊長だったチョロに、制圧術等を指南されていたチャミにしてみれば、本来「人間」に後れを取る事はない しかしやり過ぎてしまう事がない訳ではないが故に、先に手を出す事を許してしまった。

「おぃ女!っつか良く見りゃすげぇ上玉じゃねぇかよ!おいモビー!コイツを売り飛ばしゃ今までの負け分なんて軽く捲れるぜ!!」

モビーと呼ばれた左髑髏は、チャミを一瞥すると厭らしくニヤリと笑い頷いた、しかしそこへ間の抜けた声で話し掛けて来る者がいた

「ねぇおじさん達さぁ ホントにもうヤメといた方がいいよ?今ここでヤメと…」

「っつかうるせぇぞガキぃぃっっ!!大人の話に口出しすんじゃねぇっっっ!!!」

モビーは振り返り様にチュロを蹴り飛ばした、しかし。

「はっはー!ガキが大人の話に口を出すんじゃ…えっ!?」

ぽすんっと布団を叩いた様な音がしてチュロがはるか向こうにふっ飛んだ、だが右髑髏が驚いたのはそこではない、一瞬も目を離してはいなかったはずなのにモビーの姿が消えたのだ。

「モビー!!おいモビー!!どこいった!!?ちくしょう!!あのガっ!ぷぎゃ!!」

慌てた右髑髏がチャミの手を離した瞬間、今度はチャミが目を疑った 何故なら空から少年が降って来たのだ、これは何の冗談かと一瞬混乱しかけたが、気絶した右髑髏の上に立ち チャミの両手を握り締めた少年の言葉は更に追い打ちをかけた。

「ねぇ綺麗なお姉さん!?お姉さんはご飯に鰹節かけるタイプ!?それともそのまま食べるタイプ!?」


「あっ?えっ?鰹節?」


ハート型の目を輝かせたその少年はチャミの言葉を待たず質問を浴びせ続けて来た。
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