「最近の若者は欲がない」と言われる理由
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- 2019/11/12 17:10
みなさんは周囲のオトナに「今の若い人は欲がないねぇ」と言われたことがあるかもしれません。
バブル期(1986〜1991年)は高い物から売れていったそうです。つまり、高いものこそ価値があると考えられていたということですが、今の若い人はファッションでもコスメでもプチプライスのものをうまく利用している印象があります。高いものを買ったから、友達や同僚に自慢できるという時代でもなさそうです。
欲というものはあったほうがいいのか、それともないほうがいいものなのか。今日は欲について、考えてみましょう。
■「欲がない若者が増えている」と言われるけれど
「今の若者は欲がない」と言われますが、これは個人の資質より、環境の問題ではないかと思うのです。
日常会話でいう「欲」とは、上昇志向や、やる気と言いかえてもいいでしょう。
それらを強く持つ人は、「出世したい」「有名になりたい」「高級な店でおいしいものを食べたい」「いいオンナ(オトコ)とつきあいたい」という「欲の強い人」なわけです。
しかし、それこそが年寄りの発想ではないでしょうか。
◇若者が「欲がない」と言われる原因
上述したそれぞれの「欲」を、なぜ現代の若者が持たないのかについてまずは考えてみましょう。
☆「出世したい」という欲が減った理由
まずは「出世したい」という欲についてです。
ひと昔前なら会社にご奉公すれば、雇用も保証され、退職金も貰えましたが、今はそういう余裕が企業になくなっています。自分のすべてを会社に売り渡したところで、会社からは見返りがあるわけではない。となると出世したいと思う人が減ることは当たり前ではないでしょうか。
☆「高級な店でおいしいものを食べたい」という欲が減った理由
次に「高級な店でおいしいものを食べたい」。
若い世代の経済力で、高級店に行くのは難しいでしょう。そうすると、会社の偉い人や力を持っているオジサンオバサンに連れて行ってもらうことになると思いますが、その場合、ご馳走してもらう側のマナーとして、若い人はオジサンオバサンに気を使わなければなりません。
若い世代が職場の飲み会を嫌うことは一般に知られています。フツウの飲み会がイヤなのに、ましてや少人数での会食でオジサンオバサンをよいしょするほうを選択するとは私には思えません。
加えて、今は高級店に行かなければ、おいしいものが食べられない時代でもありません。ファミリーレストラン「サイゼリヤ」では、料理を自分好みにカスタマイズして食べることが推奨されていますし、コンビニのスイーツも進化しています。
若いみなさんがこだわるのは高級感ではなく、コスパではないでしょうか?
☆「いいオンナ(オトコ)とつきあいたい」という欲が減った理由
「いいオンナ(オトコ)とつきあいたい」という気持ちを持っている人はいると思いますが、「男性から誘うべき」というようなセオリーがなくなった現代、恋愛をすること自体、とても難しいでしょう。
それに恋愛は楽しい面もありますが、傷つくことも多い。そうなると、「別にいいや」と恋を遠ざけてしまうこともあるでしょう。
◇現在の若者が強く持っている「欲」とは
SNSの普及で、自分を好きなように見せることができるようになった今、若い人が唯一強く持っているのは、「有名になりたい」欲ではないでしょうか?
が、メディアに出るという意味の有名人になるのは、そもそもかなり難しいことに加えて、リスクも大きい。ネットでは顔が見えないのをいいことに、テレビに出ている人を叩く書き込みもたくさんあります。人気商売というのは、原則的に駆け出しのころは給料も安いもの。
そう考えると、有名になるのには時間がかかり、お金もなく、悪口ばかり言われるというリスクが大きいということができるでしょう。
しかし、そんなリスクを負わないでも有名人になる方法はあります。それがSNSです。自分の気に入らない人はブロックできるし、SNS界の有名人であればそこまで悪く言われることもありません。
となると、SNSにのめりこむのは当然で、それを知らない人たちがスマホを触っている若い人を「欲がない」と思うのではないでしょうか。
■「欲」は必要? デヴィ夫人の人生に学ぶ
現在の若者にも欲があるとわかったところで、「欲」とは人生において必要なものなのか、デヴィ夫人の人生から考えてみましょう。
◇豪華絢爛で波乱万丈なデヴィ夫人の人生
「欲」を駆り立てるものは、欠乏や競争です。
日本人でありながら、インドネシア建国の父、スカルノ大統領と結婚し、第三夫人となったデヴィ夫人。
『デヴィ・スカルノ自伝』(文藝春秋)によると、夫人は極貧家庭に育ったそうです。子どもの頃から美しく、勉強も得意だった夫人ですが、家計を支えるため、中学校を卒業してすぐに企業に就職します。
「世界にはばたく人になりたい」と希望に燃えて社会人となった夫人ですが、女性の社会進出などまるでなされていない時代でしたから、企業で働き続けても出世の見込みはありませんし、芸能事務所に所属して女優を目指していましたが、そう簡単にスターにはなれないと気づいてしまいます。
英語が堪能な夫人が外国人専門の高級クラブの存在を知ったのは、その頃でした。
ヘルプのホステスとして2時間座っているだけで、会社員の1カ月分のお給料をもらえることに気づき、夫人は会社をやめて専業ホステスになります。昭和30年代に夫人は月に100万円代ものお給料をもらっていたといいますから、どれだけの売れっ子だったのかわかるというもの。
このクラブで知り合った商社マンの口利きで、スカルノ大統領と知り合い、インドネシアに渡るわけですが、その後の人生も波瀾万丈です。
まず、すぐにスカルノ大統領と結婚できたわけではなく、しばらくは日陰の身でした。インドネシアには別の商社が送り込んだ日本人女性の愛人がいることを知らされます(この女性は、のちに自殺してしまいます)。めでたく第三夫人となった後も、第二夫人にいじめられる日々。
スカルノ大統領は女好きで、他の日本人女性とも関係を持つことをやめませんでした。夫人に内緒でこっそり第四夫人をもらいます。女性問題に悩まされたデヴィ夫人は、修道院に家出したり、自殺未遂を図っています。
クーデターに巻き込まれて国を追われ、日本を経由してパリに亡命もしました。
波乱万丈で豪華絢爛な人生ですが、その分、苦労も多かったのではないかと推察します。
◇「欲」というのはハイリスク・ハイリターン
夫人の人生を見てもわかるとおり、欲を持つ人は、その分努力するでしょうから、成功して認められることも多いでしょう。
しかし、努力ですべてがどうにかなるほど、世の中は甘くありませんし、ハイレベルな集団に身を置くほど、競争は過酷になります。
成功した新参者をいじめる人もいるかもしれません。そういう悔しさをバネに、さらに1ランク上がろうとする人もいるかもしれませんが、それと同じくらい、心を病んでダメになってしまう可能性だってあるでしょう。
欲というのは、ハイリスク・ハイリターンなのです。
◇欲がないのは幸せなのか
欲のない人は、見返りはないかもしれませんが、心穏やかに生きていくことができます。嫉妬されることも少ないですから、みんなに優しくしてもらえるという利点もあります。
そういう意味では、欲がないことで穏やかで幸せな人生が歩めるかもしれません。
「欲が強い」「欲がない」は生まれつきの体質
現在の若者にも「欲」はありますし、「欲がない」ように見えるのは、「欲」の質が変わったからです。
また、欲を持つのは悪いことではなく、成功への原動力となりうるものです。一方で、穏やかな人生を送るなら欲がないほうが幸せになれるかもしれません。
ただ、欲のあるなしは、風邪をひきやすいとか全く風邪をひかないとかと同じで、ある程度生まれつきの体質だと思うのです。
今、特に欲を持たないのは、持つ必要がないから。逆に自分の中にふつふつとわき上がる何かを感じるのなら、それに従って進めばいいのではないでしょうか?
どちらの人生も素晴らしいものだと思います。
(仁科友里)
※画像はイメージです