猫がしゃべった話1

大学を卒業して獣医師免許を取ったばかりの頃のお話。

私は大学附属の動物病院に勤務していた。

大学附属と言っても動物病院なんでそんなに大きい施設ではなかったが。


私の上司に当たる獣医師は「獣医師業務は慈善事業でも、野良犬・野良猫の保護でもない。 そのへんにいる動物を片っ端から助けていたら破産する。

ただでさえ給料が少ないのだから利益をいかにして出すか。獣医師はビジネスだってことを忘れるな。」

そんなことを常日頃から言っている人だった。 何となく大沢たかおに似ていたため以下大沢とする。


大沢は私の10歳年上の所謂中堅ポジションとして病院では活躍していた。

「獣医はビジネス」という考えが理解できなかった私は大沢が大嫌いだった。

しかし、それが病院の理念でもありほとんどの獣医師がその理念のもと働いていた。

もともと動物が好きで獣医師を目指してきた私にとっては、病院が掲げるその理念は衝撃的であった。

もちろん動物が好きなだけではこの仕事が務まらないのもわかっていたし、

獣医師は法律上人間のために存在する資格であることもわかっている。


しかし、私の中での獣医師像とはかけ離れた「ビジネス、利益至上主義」のその病院のことは、 どうしても好きになれなかった。

例えば、治療で使う抗生物質一つでも、より高価なものを選択する。


考えてみて欲しい。 自分がとても可愛がっている家族同然のペットが、 大きな病気やケガをしたとき藁をもすがる気持ちで、 少しでもいい治療を受けられるよう病院に連れてきたのに、 必要のない薬や高価な薬を勝手に使われ高額な医療費を請求される。

飼い主さんにとっては「ただこの子を助けたい」という思いだけなのに、 そんな気持ちを踏みにじるような治療内容であることも少なくはない。


私はそんな動物病院の体制に嫌気がさしていた。

もうこの上司の下ではやっていけない。

こんな仕事やめて、ボランティア団体に行ってみようか。

最初はとにかく辞めたくてしょうがなかった。


そんなある日の深夜、一人の老婆が訪れた。




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