18章−3 ソロかバンドか

翌日、滝谷さんに




「もしデビューが決まったならやらせて下さい」




と伝えた。






だが特に進展の連絡がないまま2ヶ月が過ぎ、9月になっていた。





どんどん涼しくなる空気感が切なさや寂しさを増幅させ、最後は焦りを連れてくる







僕は、会議にかけたがデビューが決まらなかったんだ。






そう思っていた。






そんな9月の午後




メンバーの歩君から、ある提案の電話があった。





「雄飛! ストリートライブやろうよ! バンドでさ!」





昔カズキにそう誘われた事が鮮明に蘇る程に、そのセリフは当時と被っていた。





「面白そうだな。他のみんなは?出来るって言ってた?」




「おう! じゃ決定!
来週の日曜代々木公園集合な!」





「おっけー」





バンドとしては初のストリートライブ






当時代々木公園はストリートの聖地でもあり、
沢山のミュージシャンがストリートライブを行っていた。





2メートルごとにバンドがライブをしていた。






音も混ざりどれがどれだかわからない程の飽和状態





僕はそれが嫌でストリートを避けていたが、新しいお客さんに出会えるキッカケを探した。






そして9月17日、



よく晴れた蒸し暑い代々木公園で、
汗だくになりながら準備をし、ストリートライブをスタートさせた。





他のバンドの音に雑ざり、
不協和音の飽和空間だったが、
何人か足を止めて聴いてくれた。






僕らはバンドをそのままストリートで伝えようと必死でプレイした。







ライブが終わると、おばさん2人が2週間後に控えた次のライブハウスのチケットを買ってくれた。






「新宿でやるのね!楽しみにしてますー」






と言って去っていった






2週間がたち、ライブの日を迎えた。






うまくはないが魂の乗ったステージだった。





未来に向かって4人はもがく

もがく

もがく

なりふり構わないステージだった。






ライブが終わると、アキヒロが





「雄飛、ストリートでチケット買ってくれた女の人が話しがあるんだって。で、今から4人でライブハウスの近くのルノアールに来てほしいって」







「は? おばちゃんが俺らに何の用だよ?」






「それはわからないけど・・・」






片付けが終わると僕らは言われるがまま2人が待つルノアールに向かった。





「こんにちは」






ノーメイクで洗濯カゴからそのまま取り出したようなシミついたパーカーを、
丸々とした体型にくるませたおばさんと、それとは対照的にカチっとした印象のメガネをかけた
ほっそりとしたおばさん







凸凹コンビ






「・・・あ、こんにちは。なんですか?」






「松永です」





と、丸々としたおばさんは言い、こう続けた





「私たち、これから事務所を作ろうとしていて、アーティストを探してるの。
それで、あなたたち、一緒に国際フォーラム目指しませんか?」






怪しさ満開の2人は自信満々で僕らに言い放つ







「あの、僕実は特定の会社にソロでお話頂いていて、まだ決まってはいないんで、契約はしてないんですけど・・・」







「あなたはソロがやりたいの?バンドがやりたいの?」








確信を突かれた。







僕はバンドに自信があったし、心からバンドがやりたかった。







同時に美味しい話にほいそれと流されソロをやろうとしている自分を恥じていた。







「いや、そりゃバンドでデビュー出来たら最高ですけど・・・」








「私たちならソロじゃなくて、バンドでデビューさせるわ」







これから事務所を作ろうとしているおばさん2人






何の実績もなく、本当に信用出来るかわからない2人







冷静に考えれば、ノウハウという武器を持っている大手事務所の方がいいに決まっている。







だが僕の心は揺れた



いや、大きく傾いた





バンドでデビュー出来る!




このバンドで国際フォーラムをいっぱいにするんだと想像をした






そして僕は




「ひとつ、質問していいですか?」





「なんですか?」






「俺達の音楽好きですか?」







松永さんと牧山さんは、真っ直ぐな眼で、にっこりと言った






「大好きですよ」







怪しかろうがなんだろうが関係なく、バンドを認めて貰えた事実が嬉しかった







他のメンバーも、わかりやすく、100点の答案を親に見せる瞬間の子供のように嬉しそうだった





その顔を見た時、僕は滝谷さんに断りを入れる事を決意した







松永さん牧山さん、そしてメンバーのチームで国際フォーラムを目指そう






そう決意した






星より光る街新宿、24才の夜

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