流行ドラマで振り返る「理想の男」の変化

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マイナビウーマン
2019/11/12 17:10

みなさんは、「あすなろ抱き」という言葉をご存知ですか?

もしかすると、かなり古いドラマで登場したシーンのため、平成生まれの女性は頭が「?」となるかもしれません……。

あすなろ抱きとは、1993年にヒットしたドラマ『あすなろ白書』に登場した、男性が女性をバッグハグするシーンのこと。近ごろ映画やドラマで話題になった「壁ドン」や「顎クイ」と同じように、女性が見てキュンキュンするようなシーンのひとつです。

今回は、リアルタイムで『あすなろ白書』を観ていた筆者が、「あすなろ抱きとは何か」を徹底解説! あすなろ抱きが誕生した名シーン、『あすなろ白書』とは一体どんなドラマだったのかなどについて、熱く紹介します。

■あすなろ抱きって何?

あすなろ抱きとは、男性が後ろから女性をそっと抱きしめるポーズのこと。近年では「あすなろ抱き」を略して「なろ抱き」なんて呼ぶこともあるそうです。

あすなろ抱きの由来は、1993年にフジテレビで放送された、紫門ふみによる漫画が原作のドラマ『あすなろ白書』第2話にて、取手治(木村拓哉)が、ほかの男性に恋する園田なるみ(石田ひかり)を「俺じゃダメか」と、後ろから抱きしめるシーンが元となります。

その後、男性が女性を後ろから抱きしめるバックハグのことを、ドラマの名前をとって、あすなろ抱きと呼ぶようになりました。

なお、このドラマで取手治を演じた木村拓哉さんは、あすなろ抱きをきっかけに一気にブレイクし、以後トレンディドラマに次々と出演。ヒットを連発することとなります。

木村拓哉さんといえばドラマ『ロングバケーション』や『ラブジェネレーション』に出演していたころのようにロン毛、イケイケのイメージがありますが、当時の彼は、メガネ姿に短髪で、真面目な爽やか好青年といった印象でした。

■イラストで解説! あすなろ抱きのやり方

あすなろ抱きをするときのポイントとなるのが、まず顔の位置。

顔は、相手の後ろではなく、女性の顔の横後ろに持っていくのがキムタク流。

顔を横後ろにすることで、耳元で愛の言葉を届けられるのがあすなろ抱き。気持ちを伝えるときは、ボソッと言いながら俯くと、より本家に近づきます。

腕の回し方は、本家ドラマを忠実に再現すると、女性の肩上から腕を通し、自分の顔位置の反対側に両手が交差するよう手を組みます。

抱き方は強くなりすぎないように、あくまでそっと優しく抱きしめるようにしましょう。

◇有名なあのセリフ「俺じゃダメか」

あすなろ抱きの名シーンが誕生したのは、ドラマ第2話のことでした。

なるみは、密かに思いを寄せる掛居(筒井道隆)がほかの女性とキスしていた現場を目撃してしまいます。ショックのあまり、ついついみんなの前でお酒を飲みすぎてしまうなるみ。取手は、そんな酔いつぶれたなるみを心配し、おんぶをして家に送り届けようとします。

やがて、道の途中で「ちょっと休憩していい? 何か飲む?」と伝える取手。「ううん。取手君のジュース、ちょっと頂戴」と言ってニコッと笑うなるみ。少し恥ずかしそうに「そうか……」と言う取手。

その後、ジュースを購入した2人は、夜の公園へ。ブランコを漕ぎながら、なるみは「私、取手君と一緒にいると全然緊張しない。肩がスーッと楽になっちゃう」と伝えます。

取手は思い詰めたような顔をしながら「掛井が好きか?」と、なるみに伝えます。「うん、好き。でも諦めた!」と答えるなるみ。「どうして?」と聞き返す取手。

なるみは、ふと掛居がほかの女性とキスしていた現場を思い出し、「掛居君、彼女いるんだよ。まいった、まいった。彼女いるんだ。あれ、やだなぁ」と、言いながら涙します。

すると、取手が後ろからそっと優しく抱きしめ「なぁ、俺じゃダメか? 俺じゃダメなのか?」と言った後で、「好きだ」と、なるみに想いをぶつけます。

抑えきれない想いを、感極まって打ち明けた取手の切ないシーンに、日本中の女性がキュンキュンしました。

■『あすなろ白書』とは?

ここまで読んで、「『あすなろ白書』がどんなドラマなのか気になってきた!」という皆さんへ、ドラマのあらすじも少し紹介しておきます。

『あすなろ白書』とは、小学館の雑誌『ビッグコミックスピリッツ』に連載されていた紫門ふみ原作の漫画で、1993年にテレビドラマ化され大ヒットしました。

内容は、女子大生なるみ、なるみが恋する掛居、なるみに恋焦がれる取手など男女5人の恋愛や友情をテーマにしたもの。

なるみは入学試験のときにシャーペンを貸してくれた掛居に恋をし、やがて想いが通じて交際が始まります。しかし、掛居による「俺は、もしかするとなるみとは不釣り合いなのでは?」という勝手な思い込みや、度重なるすれ違いが原因で破局してしまいます。

やがて、なるみは一緒にいると楽で、ずっと自分のことを好きでいてくれる取手とも交際するが、結局掛居のことが忘れられずに破局……。

その後、ドラマはヒロインのなるみが大学生から社会人になるまで続きます。最終的に掛居は、社会人になったなるみと再会し、なるみのことが忘れられない自分の気持ちに気づきます。

そして、掛居は付き合っていた彼女と別れてなるみにプロポーズをします。片思い、すれ違いなど、切ない恋展開満載のラブストーリーで、当時の若い男女達の心をわしづかみにしました。

なおこのドラマでは、石田ひかりさん、筒井道隆さん、木村拓哉さんのほかに西島秀俊さんや、鈴木杏樹さんも出演しています。

西島秀俊さんが演じる松岡純一郎は、掛居に恋する同性愛者という難しい役どころ。また、鈴木杏樹さん演じる東山星香は、同性愛の松岡に恋し、結婚、妊娠するという衝撃的な展開で視聴者を驚かせました。

今では『おっさんずラブ』『きのう何食べた?』など同性愛をテーマにした明るいドラマも増えていますが、当時のドラマ業界では非常に珍しいものでした。

ドラマの男性は、その時代の「理想」そのもの

当時、多くの女性が憧れた「あすなろ抱き」。

最近のドラマでは、「壁ドン」や「顎クイ」など、男性が強引にアプローチするものが多いですが、これらがヒットした時代背景には、おそらく草食男子が増えていることが考えられます。肉食男子が減り、女性にガンガンアプローチする男性が減ったことから、世の女性達が「壁ドン」や「顎クイ」のような俺様系、肉食系の男性に心惹かれるのかもしれません。

なお、『あすなろ白書』が放送されていた当時の日本は、高度経済成長期。男性は外でガンガン仕事し、出世して稼いでいた時代です。自信に満ち溢れ、肉食系の男性がたくさん存在したころでした。

そんな時代の最中、眼鏡姿の純朴そうな青年が、密かに抱えていた想いをそっと打ち明けるあすなろ抱きのシーンは、当時の女性達からすれば、男性の健気さが新鮮に映ったのでしょう。

そういう意味でも、ドラマの中で男性が行うアプローチは「その時代の女性が求めている理想像」といえるでしょう。そんな視点でドラマを観てみると、新たな発見があるかもしれませんよ。

(文:みくまゆたん、イラスト:菜々子)

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