いい天気なのにすることがない

「セプテンバーって何曜日でしたっけ?」
ウトウトしていたので、どんな流れでこんな質問が飛び出してきたのか定かではないが、画面には平野紫耀の笑顔が映っていた。
「じゃあさ、曜日、月曜から順に言ってみようか」
芸人のMC が促す。
「月曜からですか?」
「うん、まず月曜は?」
「サンデー」
「サンデー?…まっいいか、火曜は?」
「違ってます?」
文字通りの屈託ない笑顔。
「いや、いいから火曜は?」
自信なさそうに
「…えっと、ウェド…ぶつぶつ?」
「うん?じゃあ水曜」
「んんーえー、フライ…」
「ふむふむ、で?木曜は?」
つぶやくように
「サタデー」
「金曜?」
「あっ!金曜がセプテンバー?」
「うん、わかったね。じゃあ次行こか」
突っ込みもせずにあっさり先へ進もうとする MC に平野はちょっと困惑したような笑みを浮かべ、曜日の話はそれで終わった。

ぼんやり半眠りだった私の頭が突然すっきり目覚めた。頭の中で悪魔の巣窟みたいな建造物が壊されて、その廃墟に小さな白い平野像が建てられた。
彼は「俺、頭悪いから…とか、「それって知らないとまずいですか?
とか言いわけをしたり逆質問をしたりはしない。
流行りの言葉で言うなら、こんなのは彼のデフォルトに過ぎないのだ。

マナーにはもちろん常識は不可欠だし、日常生活に困らない程度の常識はわきまえなければならないと思うけれど、知識の常識ってどこまでだろうってずっと考えてきた。
どっかのおばさんが若いもんをつかまえて " あんた常識ないわね " とか " そんなの常識でしょ " とか言う。
" 常識 " を耳にする度に " どこまでが常識?" って考えさせられた。
Tカスは村本を無知とけなし、自分の息子を知識人と自慢する。
" 無知・知識人" の2単語を聞いた瞬間に不遜な Tカスが不細工な妖怪にしか見えなくなった。

平野紫耀は非常識なのだろうか。
世間の常識的な常識から考えればそうなのかもしれない。
でも、彼には英語の曜日や月は必要なかっただけなのだ。
私達はたいていTuesday かThursday あたりでちょっとつまずきながら、繰り返し練習して試験に備えた。
何も疑わず、いい成績を取りたい一心だった。
どういう事情だったかはわからないが平野はそのへんをスルーしてきた。
でも、ドラマの長台詞をあっさり覚えられるのだから必要があれば曜日なんかいつでも覚えらるだろう。
その人にとって必要かどうか、それが常識の尺度なのかもしれない。
平野を笑い者にしたこのシーンをぼんやり眺めながらそう思った。

常識は必要度だけではなく、もちろん時代や文化によっても変わる。
そのことになかなか気づかない喜劇の人もいる。
「今の人達はこんなことも知らないの?」 言いたい放題の D 夫人が眉間に皺を寄せた。
今の人達はこんなことを知らない代わりにあんなことやそんなことも知ってんだよ。
彼女は品も教養もやや劣るコメディアン妖怪2号。
自分の時代や自分の必要度範囲の常識で他人を責める威張りんぼうに過ぎない。

知識はお金に似ている。
まあ、困らない程度にあればいい。
将来のために少し蓄えがあればなおいい。
無闇にたくさん貯めてもせいぜいクイズ番組に出てすごいねって言われる程度。
それはちょうどセレブが自分のプール付き豪邸を自慢げに公開するのに似ている。
ミスコンやクイズコンで優勝しても90%のDNAと10%程度の努力が品評されたに過ぎないのだからそんなにすごいわけではない。
我々普通 DNA の元に生まれた普通人は必要度に応じて知識とお金を地道に少しずつ貯めていけばそれでいい。
入り口はちょっと違ったけれど、それは平野も同じ。
彼も必要に応じて知識の貯蓄を少しずつ始めているに違いない。








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