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岩手山(5)




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大地獄谷、網張火山群










地図 岩手山西部







 


大地獄谷

谷筋に火山噴気孔があり、硫黄のガスが立ちこめています。
木曽御岳のような事故は起きていないようですが、
早く通過しないと危険です。

賢治の時代には、大地獄谷に沿って東八幡平方面に
下りる道は、まだなかったようですから、賢治は、
上から見おろすだけだったかもしれません。しかし、
「大地獄」の、草一本生えない荒涼たるようすには、
強い印象を受けたはずです。




大地獄谷 
噴気孔の拡大

白い噴煙が見えるでしょうか?臭いからすると、
硫化水素と無水亜硫酸(二酸化硫黄)の混合気の
ようでした。




  (どうなさいました 牧師さん)

 あんまりせいが高すぎるよ

  (ご病気ですか
   たいへんお顔いろがわるいやうです)
  (いやありがたう
   べつだんどうもありません
   あなたはどなたですか)
  (わたくしは保安掛りです)

     
〔…〕

  (ではあのひとはもう死にましたか)
  (いゝえ露がおりればなほります
   まあちよつと黄いろな時間だけの仮死ですな
   ううひどい風だ まゐつちまふ)

 まつたくひどいかぜだ
 たほれてしまひさうだ
 沙漠でくされた駝鳥の卵
 たしかに硫化水素ははいつてゐるし
 ほかに無水亜硫酸
 つまりこれはそらからの瓦斯の気流に二つある
 しやうとつして渦になつて硫黄華ができる
     気流に二つあつて硫黄華ができる
         気流に二つあつて硫黄華ができる

  (しつかりなさい しつかり
   もしもし しつかりなさい
   たうたう参つてしまつたな
   たしかにまゐつた
   そんならひとつお時計をちやうだいしますかな)

 おれのかくしに手を入れるのは
 なにがいつたい保安掛りだ
 必要がない どなつてやらうか
          どなつてやらうか
             どなつてやらうか
                どなつ……
 水が落ちてゐる
 ありがたい有難い神はほめられよ 雨だ
 悪い瓦斯はみんな溶けろ

  (しつかりなさい しつかり
   もう大丈夫です)

 何が大丈夫だ おれははね起きる

  (だまれ きさま
   黄いろな時間の追剥め
   飄然たるテナルデイ軍曹だ
   きさま
   あんまりひとをばかにするな
   保安掛りとはなんだ きさま)

 いゝ気味だ ひどくしよげてしまつた
 ちゞまつてしまつたちいさくなつてしまつた
 ひからびてしまつた
 四角な背嚢ばかりのこり
 たゞ一かけの泥炭になつた
 ざまを見ろじつに醜い泥炭なのだぞ

『春と修羅・第1集』「真空溶媒」より。



∇ 本記事はこちら⇒:
〜ゆらぐ蜉蝣文字〜 2.1.16









網張登山道 
黒倉山付近

道の真ん中に、小規模な噴気孔があります。
付近の地下は、空洞があったり、80℃以上の
高温の場所があったり、たいへん危険です。







七時雨
(ななしぐれ)山 黒倉山付近から。



 からまつはふたたびわかやいで萌え
 幻聴の透明なひばり
 七時雨の青い起伏は
 また心象のなかにも起伏し

『春と修羅』「一本木野」より。



∇ 関連記事⇒:
【一本木野(4)】










      ※

      ※

 雲ひくき峠越ゆれば
(いもうとのつめたきなきがほ)
 丘と野原と。
 
      ※
 
 草の穂は
 みちにかぶさりわが靴は
 つめたき露にみたされにけり。
 
      ※
 
 あけがたの
 皿の醤油にうつり来て
 桜の葉など顫ひあるかな。
 
      ※
 
 すゞかけの木立きらめく朝なるを
 乳頭山
(にゅうつむりやま)
 ゆき降りにつゝ。
 
      ※
 
 いたゞきに
 いささかの雪をかぶるとて
 あまりいかめし
 乳
(にゅう)つむり山。
 
      ※
 
 蜘蛛の糸
 ながれて
 きらとひかるかな
 源太ヶ森の
 碧き山のは。

『歌稿B』#370-375.〔初期形〕







姥倉山
から南西を望む。
近景は、大松倉山〜三ツ石山から
源太ヶ岳、八幡平方面につづく尾根。
遠景に、岩手・秋田県境の山々が並ぶ。
遠景右端の雲をかぶった山が、乳頭山。




姥倉山
から北西を望む。
中央遠方に見えるのが、源太ヶ岳。

↑上の短歌の「源太ヶ森」は、源太ヶ岳の
ことと思われます。



 ↑上の短歌群は、もし連作だとすれば、源太ヶ岳と乳頭山の両方が見える場所は、このへんしかありません。しかし、「すゞかけの木立」「皿の醤油」など、高山ではなく街中を思わせる語句もあります。ひとつの場所からの連作スケッチではないのかもしれません。







葛根田川 
姥倉山付近から俯瞰。

もやで遠くが霞んでいますが、
この河が流れてゆく下流は、雫石です。



      ※

 葛根田
 谷の上なる夕ぞらに
 うかびいでたる
 あかきひとつぼし。

      ※

 葛根田
 薄明穹のいたゞきに
 うかびいでたる
 あかきひとつぼし。

『歌稿B』#520,521.



∇ 関連記事⇒:
【雫石(1)】





∇ ひとつ前の記事⇒:岩手山(4)




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